H1をハンヴィー化する際、実際一番勇気がいるのがウエポンステーション。自分も当時は何種類かの方法を考えました。雨漏りが完全にない方法として、穴を空けずに上にパーツを載せるという方法。スラントバックと一緒に天井部分をアメリカから輸入する方法。
国内になんとかウエポンステーションを持ち込みたかったのですが、当時は規制もまだ厳しく、全く輸入できる見込みが立ちませんでした。911が原因です。それ以前に国内にはいっていたウエポンステーションも何台かは確認できました。ウチ車体から外されているのは2台分?その1個が那須PSガレージのオーナーM氏が所持してらっしゃいました。スラントバックと一緒にハマーオーナーズクラブのトビ先生のガレージに置きっぱなしの状態に…さすがに売ってはいただけませんでしたが、測定させていただけました。これもトビ先生のおかげです。
でっ完成したのがこれ。計測した簡単な図面をもとに結局FRPで製作してもらうことにしました。
FRPの魔術師ダックスガーデン
有働先生との出会い
東京国際カスタムカーコンテスト2008
スポーティーカー部門最優秀賞を受賞
とにかくFRPでたっちゃん漬けの人形みたいなものを扱っている法人から片っ端当たってみたところ、車検に通らない角度とかスラントバックの開閉加工など、やはりクルマの改造に関してはクルマ屋じゃないといけないという結論に達しました。そしてクルマFRP加工から、キャラクターなどなんでもFRPでつくることが出来る有働先生にたどり着きました。当時有働先生はNHKからも依頼を受けており「ハゲタカ」映画化にともない架空の自動車メーカーの新車発表用にクルマを作り終わったばっかりでした。ミニバンのエアロとか面白くないものを作りたがらない生粋の職人です。拝み倒して渋々了承していただいた時には、飛び上がって喜んだものです。
もともと日産の試作品のモデリングをやっていただけあって腕は確かです。FRPの神様です。ウレタンをカンナで削るというダイナミックな技の持ち主
クレイドルを装着する円柱までをFRPで製作依頼をさせていただきました。FRPで作れない部分はなんとかアメリカから自力で入れ、製作最中にお渡しすることまで了承していただけました。
ウエポンステーション用に購入したパーツ類
●左下の写真からウエポンステーションのフタをロックするクランプ。Ebayで購入した時は2万ぐらい。今現在ではミリブロのスラントバックT氏のところで1万円で手に入ります。一緒に写っているのはリア用リフレクター。H1にはついていません。H1にハンヴィーウインカーを付けた場合、軍用ウインカーにはリフレクターが一緒になっていないため、ハンヴィー用のリフレクターがついています。前はオレンジ色
●真ん中下の写真には銃座を回転させないようロックするターレットハンドルが写っています。これは相場で言うと50000円以上します。一緒に写っているのはガンナーベルトで、銃座から体をだしているときに座ったりします。
●右下写真はクレイドルです。銃を置く台で「ゆりかご」のようにゆれるのでクレイドルと呼ばれています。写真のクレイドルはM60用で11kg。(45000円~75000円)FRP銃座に置けるモノホンクレイドルの重さとしては限界かもしれません。M2のクレイドルも持っていますが、ミシっといういやな音がします。車輌を動かした時点でアウトでしょうね。なので基本的には上につけるものも、FRPかABSで作り直さないと走行しながらの装着は非常に危険な状態となります。急ブレーキとかけて重いクレイドルがボンネットに落ちてくる瞬間だけは見たくないものです。後日軽量クレイドル製作の部分もアップいたします。
あえてベアリングを採用しない方法
面倒なのは稼動部分をこれから全て新しく開発するということだったと思います。そんな中で有働先生は画期的なアイデアを図面に落としてメールで送ってくれました。大きな雨戸の下についているような車輪を数個を回転する上部に固定し、溝を円を描くように回転させるアイデアでした。上の図にはターレットハンドルが穴に納まって固定される部分も描かれています(左側真ん中)
図面にあわせて車体上部に穴を空けたばかりの写真。実際天井下からカバーを外すとスピーカーの中に入っているような灰色の綿といいましょうか防音材が出てきます。それらを取り外すと鉄板一枚になる訳ですが、ハンヴィーはこの部分がスチールでできています。H1はそうではありません。ごく普通のクルマの天井と同じ素材です。画像では同時にスラントバックもやってもらっていたため、Cピラーから後ろも切り取られています。このとき天井の鉄板を支える部分がないため、天井がしなってしまったそうです。写真ではそのしなりを防ぐために緊急処置で木材をCピラーとの間に挟んでしのいだのが写っています。
H1はハンヴィーのような強度は必要ないため、こうなってしまうのは当たり前ですが、有働先生は見事にBピラーを叩き切ったあとにウエポンステーションの周りの強度を高めてくれました。実際本物のクレイドルをつけても、天井がしなることなく軽快に回転させる事ができました。H1の天井にもっとも優しいウエポンステーションが開発されたといっても過言ではないでしょう。もっともそれを望む消費者がほぼ存在しませんが(笑)
※2012年現在チームるりるりさんの與那嶺殿がウエポンステーション化をダックスガーデンさんにて製作していらっしゃいます。早ければ2012秋のハートロックでお目にかかれるかも知れません。天井に穴を空ける勇気。與那嶺殿に他人ならぬものを感じます。
これらはウレタンを研磨して作った型をもとに、全てメス型まで作成していただいて、それを型取る形式をとるので、モノも大きいせいか莫大な労力と時間が必要となります。
青のビニールシート上のパーツはメス型取り直前の状況です。ハッチの細い金具の部分なんか見事に表現していただけてます。
結局有働先生を半年以上拘束する事になりました。有働先生は実際のものを写真でしか見た事がないのに出来栄えはとても素晴らしい出来となっておりました。
完成状態 |
円柱の上に設置できるモノの重さは20kgぐらいが限度?…一応M2用クレイドル実物を上に載せたときの状態。M60のクレイドルとは比べ物にならないくらい重い。FRPでも停車時にはなんとかなりそう。しかし天井がしなるのでお勧めはできません。 |
イラク初期2003~4年ごろ